「ジャニーズをデジタルに放つ新世代」についての考察
※個人の考察・推測からなる感想です。実際スタッフさんがどこまで考えて仕込んだ演出なのかは分かりませんので悪しからず。
「ジャニーズをデジタルに放つ新世代。」
このキャッチカッコいいよね〜。この字面だけで泣ける。2018年度 年間コピー大賞を贈りたいですね本気で。
どうも、先日SixTONESの沼に沈んだ演出オタクです。
もともと各メンバーを推してはいたのでほぼ出戻りなんですけど。まぁその話はまた別の機会にでも書きたいと思います。
今日はね!なんと言っても!!
JAPONICA STYLEのMVの話がしたい!!!!!!
YouTubeアーティストプロモキャンペーン、そのアーティストに選ばれたSixTONES。そのPRの一環でMVを作るという。
告知ドッキリ(https://m.youtube.com/watch?v=ljclG4xMfwE&t=0s&index=11&list=PLBw8EmMNM8vwT-iEhtMNpD9CmpGxzt4Ad)
MV(https://m.youtube.com/watch?v=DBRSulH8qpM&t=0s&index=10&list=PLBw8EmMNM8vwT-iEhtMNpD9CmpGxzt4Ad)
舞台裏(https://m.youtube.com/watch?v=MAnu-z_Lmo0&t=12s&index=9&list=PLBw8EmMNM8vwT-iEhtMNpD9CmpGxzt4Ad)
この一連。最高の企画だった。SixTONESのいいところ全部出てた。好き。
と、この調子で好き好き言ってたら進まないのでポンポンいきたいと思います。
やっぱり何と言っても演出が天才。
すみませんね、毎度「演出が…!」って騒いでる面倒なオタクで。
でも今回は本当に演出ヤバイんだって。
プロデューサーにあの滝沢秀明様が。ヤバイじゃんそれ。(YouTube企画って基本的にやっすいカメラ数台で回して撮ってるから舞台裏回とか正直見てられなかったんだけど)今回はヤバイ。金がかかってる。
っちゅーわけでワクワクしながら見たわけですよ。
え、これ無料コンテンツで大丈夫??
かっこいいとかそういう次元じゃない。いやもちろんかっこいいんだけど!死ぬほどかっこよくて数回見直さないと演出入ってこないくらいだったんだけど!
映像作品としてのメッセージ性が強い。
演出でここまで打ち出してくるとは思わなかったな。
「ジャニーズをデジタルに放つ新世代」ってそういうことか。
なんかね、このキャッチコピーを最大限に映像で表現した世界で、すごく衝撃を受けた。「YouTubeでMVを公開すること」によって「ジャニーズをデジタルに放つ」。
そんなテーマをゴリゴリに表現している演出部分をなるべく簡潔にわかりやすく紹介しますね。
- デジタル化とは
まず、ここでいうデジタル化の定義。普通に考えたら「YouTubeにチャンネルを持つこと」だと思うんだ。今までジャニーズがやってこなかったSNSへの露出を指してるんでしょって。
でもここでは放送のオタクらしくしっかり考えていきますよ。
映像の業界(というかマスメディア)でいう『デジタル化』って、2つの意味があって。
・デジタルに基礎を置いた新しいサービス
・伝統的なメディアのデジタル化
大きく分けてこの2つ。
1個目のデジタルサービスは言わずもがなでしょ。
インターネットが普及した21世紀。2018年の放送研究の世論調査報告書によると、日常的にテレビを利用(生視聴・録画視聴)している人が60%なのに対して、SNSを毎日使用する人が57%。特に、若者層の約6割が毎日SNSを利用しているそう。
そんなデジタル社会に、長らくジャニーズ社は参入してなかったわけだ。それが今、独自のチャンネルを開設して露出を積極的に行うようになった。まさにジャニーズのデジタル化が行われている。
じゃあ2個目の既存メディアのデジタル化とは?
デジタル化(数値化)されることで、大量な情報がものすごいスピードで流通される。それによって、受け取られる情報の個人化が生まれる。調査によると、情報に対して「自分が知りたいことだけを知っていればいい」と考える人が全体では31%、20代では45%にものぼるという。これにより、メディアが求められる情報のジャンルが多層化し、万人にウケるコンテンツが生まれにくくなった。
しかし、そんな社会でもマスメディアは「広く情報を伝える」ことを求められる。放送(broadcast)の語源はbroes(広く)+cast(投げる)→広い地域に情報を流すだからね。それが既存メディアのデジタル化に繋がる。
で、ジャニーズにとって既存メディアと言ったらやっぱりテレビだと思うんですよね。雑誌、ラジオ、新聞、そしてテレビ。これらがマスコミ4媒体なわけだけど、中でもトップシェアを誇っていたのがテレビじゃないですか。
そんなこんなでこのMV、何かとテレビを意識してやがる。
ということで、前置きはこのくらいにして。演出の細かいところについて考えて行きましょ。
まずは、なんといってもタッキーこだわりのカット割について。
- 「止まっている瞬間がない」
これは撮影裏側回での樹談から、タッキーの意図のある演出だと分かる。
MV前半のパートに特に顕著。カメラを揺らし、わざと「動」のカット割にしている。
ここで比較されるのが、従来のテレビでの演出技法。テレビは不特定多数に向けて発信されるメディアであり、唯一、法(放送法)によって規制が設けられている。
そんなテレビでは、このようにわざと「動」を産み出す演出はタブー視されることが多い。この「動」の演出は、スマホやパソコンに比べて大画面のテレビで放送された場合、まれに‘映像酔い’を起こす危険性があるからだ。このようなリスクを、大衆メディアであるテレビは好まない傾向がある。
つまりこの演出は、小さな画面で見ることを想定されたYouTubeだからこそ実現できるものだと言っても過言ではない。
ちなみに、映画では逆に、この「動」の演出をいかに効果的に使うかで作品の良し悪しが決まると言われている。巨大スクリーンで「酔い」を覚える観客も出てくるように思われるが、“映画というコンテンツを観にきている”というある種の自覚(自分で選択したことによる覚悟)が観客にはあるため、これがタブー視されることは少ない。一方テレビは番組の初めから視聴するとは限らない(ザッピングしてたまたま観る視聴者もいる)ため、見たくもないのに見たせいで酔った、と言われてしまう可能性があるのだ。これが同じ映像作品である映画とテレビの演出における大きな違いでもある。
「動」の演出が顕著な映画の例として、現在公開中の『ファーストマン』が挙げられる。ロケットの打ち上げ時のGのかかった状態を表現するため、激しい横揺れ縦揺れの演出が見られるので、興味のある方は是非。
あと、これは言っちゃっていいのか分からないけど一応。この‘映像酔い’を起こす揺れは、心臓がドキドキ・頭がクラクラして「カッコいい」「好き」と錯覚させる効果もある。つまり、MVをより印象付けるための策略の演出でもある。
テレビより大きなデュアルモニターで見る人は酔わないかって?そんなこと初見でする人はオタクしかいないから大丈夫。存分にSixTONESのカッコいいMVに酔いしれてほしい。(つまりそれなりに大きな画面で見せると布教効果が見込めるってわけよ。布教活動の際は是非大きな画面を活用してね。)
これは参考資料で説明しないと難しいな。
こういう。
前のカットと次のカットの映像がほぼ同じ画角で。
同時に見えるように緩くディゾルブ(切り替え)をいれる演出手法。
これはテレビではマジでタブーな演出。
このダブって見える演出は、アナログテレビ時代の「ゴースト」と呼ばれるテレビ特有の電波障害に間違われる可能性があるからだ。
「ゴースト」は「多重像」とも呼ばれ、テレビ塔から送られた正常電波と、近隣の建物に反射した電波を同時受信した際に発生する電波障害である。
この現象はデジタル放送に切り替える段階で、ノイズをブロックするテレビ品質の開発・運用が行われ、現在では発生しなくなった現象であるとされている。
あと、これもさっきの「動」の演出と一緒で、ダブりによる「酔い」を起こすことがあり、テレビでは好まれないカット割。こんなスイッチングしたら「ダブってんぞバカ!!」ってめっちゃ怒られますね。
なんでダブってちゃダメなのか?テレビの歌番組などでは、カット割は「飽きさせないための変化」でしかない。ここに畳み掛けるようにカットを重ねると、視聴者からは「しつこい映像」と捉えられてしまう。
映像メディアは、文章や写真のように必要な情報だけを載せたメディアとは異なり、周りを取り囲む空気の情報までもを伝える。その膨大な情報から、視聴者は必要な情報を選択して認識している。
つまり、歌う表情やダンス、セットや衣装全ての情報をバランスよく届けなければ、どの情報が重要なのか認識してもらえず、要らない情報を畳み掛けられているように感じられてしまう。(これはあくまでテレビでは、ね。MVではカットをたくさん切り替えられるのは特にタブー視はされていません。)
このYouTubeの場合では、それを逆に武器として「膨大な情報」の疾走感を感じさせる。ネット、デジタルの中に放たれるジャニーズ、SixTONESの勢いを印象付けさせている。
- 砂嵐
これーー!!これがもう決定打!!(急に大興奮)
まずね、砂嵐って、テレビでしか生まれない現象なんですよ。つまりこれはテレビの象徴。
まず1回目。ド頭のタイトルバックカット。
(砂嵐をキャプるオタク)
ここ白黒カットなんだよね。ここでテレビメディアが生まれます。まずはじめは【白黒テレビ】ですね。偉大な発明だっぺ。
2回目
白黒→カラーの変わり目として使用される。そのままだね。白黒テレビから【カラーテレビ】へ。
3回目。
まじでどこだよってキャプでごめん。ジェシーの「太陽に〜」の前のところ。象徴としては【地デジ移行期】じゃないかなぁと思ってる。2回目の【カラーテレビ】からこの【地デジ移行】の間(1サビ〜太陽にの間)に、さっきの「ダブりのディゾルブ」カットが多いことが根拠。先述の通り、このダブり「ゴースト」はアナログテレビにしかなかった電波障害。それが多く起こってる=移行期と考えられる。日本のテレビ業界にとって、地デジ化はかなり大きな歴史的事項だよね。
4回目。
ここからがやばい。
これ静止ゾーン手前の砂嵐ね。
ここと次のところだけ音声ノイズ付きの砂嵐。存在感ばり強い。つまりここ重要。
静止ってテレビじゃやらないんですよ〜、当たり前だけど。画面ポーズも3秒以内とかって規定で決まってる。それ超えたら放送事故。ここでテレビとYouTubeのメディアとしての違いをはっきり見せる。はい、つまりここで新メディア【デジタルサービス】が生まれます。このブログの序盤で書いた、デジタル化の1つ目ですね。
つぎ5回目。
きょもちゃんの麗しいお顔のシーンですね。(砂嵐で止めてごめん)
ここで静止が動き始める。ここも音付き。
この約0.5秒後にもう一度砂嵐が挟まります。
バラの中で静止していた場所から、外(ビルの屋上)シーンへ。
ここは2つで5回目ってカウントしていいんじゃないかなぁって。
この屋上シーンから、「動」のカット割も、ダブりのディゾルブもなくなります。
つまり、テレビ演出として放映できるということ。これが何を意味するか、もう分かりますよね?
そうです、デジタル化の2つ目の意味。【既存メディアのデジタル化】です。
屋外に出たことにより、“テレビという定められた枠組み”から飛び出たことも印象付けられている。やべえな、ここまで考えられて作られてたらこっわ......。
あときょもちゃんのパパの口紅の踏襲を入れたのも絶対意味あるよね、既存の再構築ですよね。
4回目と5回目の砂嵐にだけ音声ノイズつけてるのもやばいよね......。デジタル化の印象付けじゃん......。こっわ.......。
そして最後!6回目!
屋上からのバラ降りパートですね。(なんかシュールなバラ降りで止めてごめんw)
このバラ降りを受けて、SixTONESが6人同時に走り出す。
いやぁエッモいなぁ......。デジタル化を背負って進んでいくスト。しんどいね。
ここまでで砂嵐による演出が【6回】なんですよ。エモすぎません?
白黒の時代から始まった、テレビを軸とした活動から、2つのデジタル化を経て先へ進む6人。
まさに「ジャニーズをデジタルに放つ新世代」の象徴。
ね?これがここまで5千字近く書き綴ってきた、MV演出から見るあのキャッチコピーの真意です。
自分で書いててしんどさで爆発しそう。演出最高すぎません??
ちなみに、走り去った彼らのラストカットにも、軽く画面割れのエフェクトがかけられています。
でもこれは砂嵐じゃないのよ。今までの砂嵐より明らかに細かい。これはデジタル機器でしか見られない電子の乱れ的なやつなんじゃないかな。デジタル世界側を表現した演出だと思う。
ここまで既存メディア・テレビを意識しまくった、それでいてテレビにはできないYouTubeでのMVならではの演出について話してきました。
実際に、テレビでこの演出をしようとしたらどうなるのか?そこんとこ、気になりません?
なんと、我らが少年倶楽部さまがやってくれています。(2019/01/04放送回)
照明がもうMV意識しまくりだよね。後ろからのムービングスポット(白いやつ)の動きは完コピだし、薔薇の花を赤い照明で補ってる。カメラもクレーンカメラと手持ちカメラを使って、できるだけ「動」の演出を見せようとしてる。
でもやっぱりNHK、公共放送だからさ。見てもらえればわかると思う。テレビの限界が見える。
私には、MVよりもゆっくりゆったり、間延びしてしまったように見えますね。
これの比較がめっちゃ楽しい...。テレビにはテレビの演出があるし、YouTubeにはYouTubeの演出があるんだなぁって。これからも演出に注目していこーっと!
っちゅーわけで、今後のSixTONESの活躍とタッキーの演出とこれからのジャニーズのデジタル化がどう進むのかが楽しみです!!!!
以上!!!!ありがとうございました!!!!